企業防災の新常識。クラウドが「止まらない会社」を支える理由
なぜ“企業防災”がこれほど重要視されるようになったのか
日本は災害の多い国です。地震、豪雨、台風、そして停電や通信障害。こうした事象は、企業の事業活動を一瞬で止める可能性があります。
そのため近年では、企業防災は「災害対策」という枠を超え、 “事業を維持するための経営の基盤” として捉えられるようになっています。
企業防災の転換点となった二つの大震災
企業防災の考え方が大きく変化したのは、阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)でした。
阪神・淡路大震災
通信設備の損壊や工場停止により、“事業継続ができない”という現実が一気に表面化しました。企業にとって、 データや設備の保全だけでなく、事業そのものを継続する仕組み が重要であると認識されました。
東日本大震災
被害規模が大きかったため、停電や通信障害が長期化しました。オフィスや設備が無事でも、 社会インフラが止まれば業務が行えない という課題が浮き彫りになりました。
この二つの経験から、企業防災の視点は 「拠点を守る」から「拠点に依存しない」 という方向へ大きくシフトしていきます。
クラウドを導入していない場合に生じるリスク
近年はクラウドの普及が進んでいますが、まだ社内サーバー中心で運用している企業も少なくありません。その場合、災害発生時には次のようなリスクが顕在化します。
1. データ消失のリスク
物理サーバーは、地震・火災・浸水による破損の影響を受けやすく、データが一度に失われる可能性があります。
2. 復旧に時間がかかる
停電や設備故障の復旧には時間を要し、業務再開までに長い時間が必要になることがあります。
3. 出社できなければ業務が止まる
社内ネットワーク依存の環境では、交通混乱や避難指示が出た場合、業務そのものが停止してしまいます。
4. 情報共有の途絶
メール、ファイル、システムへのアクセスが遮断されることで、災害時に最も必要な 情報共有と意思決定が難しくなります。
こういった課題は、企業の規模に関わらず共通しています。
災害に強い情報基盤としてのクラウド
阪神・淡路大震災、東日本大震災を経て浮かび上がったのは、 “データと業務を、建物という物理的な枠から解放する必要性” でした。
クラウド環境は、この課題に対して非常に合理的な解決策を提供します。
データを複数拠点で保管
物理的な被害の影響を受けにくく、データ消失のリスクを大幅に軽減します。
どこからでも業務が可能
自宅、別拠点、避難所など、働く場所に柔軟性が生まれます。
復旧が早い
バックアップや冗長化が自動化されているため、障害発生時の復旧が迅速です。
平常時の働き方も改善
災害時だけでなく、日常的にテレワークやモバイルワークの柔軟性を高めます。
こうした特徴により、クラウドは 「災害時に企業が止まらないための基盤」 として注目されています。
企業防災の目的は“事業を続けられる会社であり続けること”
企業防災の本質は、災害そのものを防ぐことではなく、 災害が起きても事業が継続できる状態をつくること にあります。
そのためには、「物理的な拠点に依存しない情報基盤」を整えることが欠かせません。
クラウドはその一つの選択肢であり、企業防災の考え方と非常に相性のよい仕組みです。
本稿が、自社の防災体制を見直すきっかけとなれば幸いです。